平成21年11月8日

特定非営利活動法人 「海上の森の会」 設立趣意書

 1. 趣 旨
 任意団体海上の森の会の活動は、主に瀬戸市南東部に位置する530haの丘陵地「海上の森」で自然環境調査、環境学習、森づくり、里づくりなどの事業を行い、人と自然の関わりのあり方を探求すると共に、それらの事業を担う人材の育成、市民の参加と交流の促進に取り組んでいます。
 「海上の森」は、2005年に開催された日本国際博覧会の会場候補地となり、その会場決定を巡り「愛知万博検討会議―海上地域として」が設置され、市民参加による検討会議を経て万博会場は南地区の一部に縮小され、海上の森の大部分は現況のまま残されました。また、海上の森全域で行われた環境影響評価調査では、オオタカ、シデコブシなど危惧種、希少種等を始め様々な調査データが得られ、これらの膨大な資料は海上の森の貴重なデータとして有効活用が待たれています。
 私達は、多くの人々の自然への関心を喚起し、自然体験活動や里山保全活動を通して、海上の森の持つ自然の価値を認識し、この地域に生きた人々の歴史を忘れることなく、海上地域ならではの里山文化を創生します。また、都市近郊に残された自然と持続的に関わりあえるような地域づくりと里山再生を目指しています。
 市民が積極的且つ主体的、持続的に県・地域と協働して行う新たな里山文化形成の取組みの成果を一層上げるために、特定非営利活動法人「海上の森の会」を設立するものです。

2.申請に至るまでの経過
 任意団体海上の森の会は、愛知県の里山学びと交流の森検討会で検討された「県民参加のシステムづくり」を受けて平成16年12月23日に設立し、自然環境調査、森づくり、里の伝承行事、里山サテライト(古民家)の保全、環境保全活動、案内巡視、ホームページ、会報「海上だより」発行等を独自事業として、また、あいち海上の森センターと協働して海上の森ツアー及び里づくり事業等を、設立当初から5年間継続実施してきました。
 平成21年度からは、新たにあいち海上の森センターの委託事業「里の教室」、「調査学習会」及び「里山のものづくり」を実施しています。
 自然環境調査では、通年の調査で得たデータが海上の森保全の貴重な基礎資料として活用されています。森づくりでは、間伐を継続実施し森の保全に寄与しています。海上の森ツアーでは、毎回多数の市民が参加して自然体験を通して森の保全について理解を深められています。里づくりでも、毎回多数の市民が参加し農作業体験の成果を挙げています。  
 海上の森に係わる多様な事業を通して、新たな里山文化形成の取組みの成果をより上げるために、特定非営利活動法人「海上の森の会」の設立を発起して、申請するに至りました。

   
 

2004年10月30日発起人会にて合意 

「海上の森の会」 設立趣意書

海上の森は、都市近郊のいわゆる里山として、人と自然のさまざまな営みを見守り続けてきた。歴史的には自然と人間活動の大きなうねりの中で、時には植生を攪乱され、荒廃した山地に悩まされ、しかし一方ではその暮しに豊かな恵みをもたらし、あるいはまた海上とその周辺地域に持続する生活・文化を生み出す母体として、人々の暮らしを支えてきた。1980年代後半以降、「海上の森」は2005年日本国際博覧会の会場予定地として、自然をめぐり、また地域活動や里山の保全・活用のあり方をめぐり、多くの議論の渦中にあったし、愛知万博のあるべき姿を模索するための知恵のたたき台を提供する場として注目されもした。それは、自然を愛する人々の間にも不信感や対立を生み出しはしたが、同時に、多くの人々の自然への関心を大いに呼び起こし、自発的な自然体験活動や里山保全の活動を喚起し、膨大な自然情報を蓄積し、活用することを通して、「海上の森」の価値を高め、今後の県民活動への期待をつなぐことともなった。

博覧会会場計画の紆余曲折の末に、「海上の森」はその姿を留めることになった。地域住民も、自然豊かな地としての海上を愛するものも、里山活動を担おうとする献身的な活動者も、そしてこれまで里山の保全に多様な想いを持って参加してきた県民その他の活動参加者も、この地にどのような里山像を描くことができるだろうか。私たちは海上の歴史に学び、海上の自然や、生活・文化を将来にわたって継承しなければならない。さらに多くの県民・市民が「海上の森」の将来に、21世紀の地域づくりへの期待をもって参加できるような仕組みが、いま求められている。

「海上の森」は大都市圏に残る貴重な自然であり、里山として他に類を見ない生物多様性に富んだ地域である。それだけに現代人が失いがちな自然に触れる喜びを身近に実現する空間であるとともに、自然を厳に保全する地域であることもまた忘れてはならない。そこでは保全と活用が対立的に語られるべきではない。

里山と自然をめぐる長い議論はいまも途切れることなく続いているが、今ようやくひとつの流れが形成されつつある。私たちは「海上の森」のもつ自然の価値を損なうことなく、海上に生きた人々の歴史を忘れることなく、自発的な県民の取り組みを通して、「海上の森」の自然を守り、海上ならではの里山文化を創生し、県民が多様な自然観を併存しつつ、協働して、都市近郊に残された自然と持続的に関わりあえるような地域づくりを目指したいと考える。

この身近な自然でのさまざまな取り組みに、私たち愛知県民とその活動に共鳴する多くの市民が、積極的かつ主体的に、そして持続的に関わるためには、県民・市民が自発的に参加し活動する組織を立ち上げ、県・地域と協働して新たな里山文化形成を進めることが何より重要である。「海上の森の会」は、多くの人々が「海上の森」での活動に参加することで支えられる組織である。自然や里のあり方をめぐる意見の相違を、対立ではなく、交流と模索そして何よりも主体的な活動をもって乗り越え、共に学びあい、発展する、開かれた組織となりたい。

こうした「海上の森」への想いを体現するために、県民の活動組織である「海上の森の会」を設立するものである。多くの県民の皆さんがこの試みに参加されて、自分の手で自然にふれ、自然を守り、自然と関わる喜びを共有されることを期待したい。